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バレルめっきの等価回路と応用
バレルで行う電気めっきは、回路中の抵抗が少ないほど無駄な電力損失が少ないので、 理想的なめっき条件に近づきます。その電気回路を簡易的に表した「バレルめっき等価回路」は、図のようなものです。この等価回路を応用すると、バレルめっきの重要な情報が見えてきて、トラブル解決に役立ちます。測定はきわめて簡単ですから、工場内で手軽に実施できます。
「測定方法」精度がよい回路計(テスター)の直流電圧測定レンジで、3ケ所の電圧を測定します。
また、直流電源の電流値をメータで読んでおきます(図のi ;その値は正しいと仮定)
直流電源の出力端子付近の電圧を測定(図のE0;出力電圧という)
めっき槽付近の陽極と陰極の間の電圧測定(図のE1;槽電圧という)
バレル付近の陰極(ブスバー)とバレル吊手の間の電圧測定(図のE2、接点電圧降下という)
「解析方法」次の代数式から、各種の抵抗成分を計算
電線路抵抗;R1=(E0-E1)÷i
バレル吊手抵抗;R2=E2÷i
めっき液・バレル内部抵抗;R3=(E1÷i)-R2
評価
- R1が大きい......直流電源インピーダンス大、出力ケーブル不良、ターミナルのユルミ、接触不良など
- R2が大きい......バレル吊手フックの接触不良、連結ネジゆるみ、ブスバーの表面酸化など
- R3が大きい......陽極面積過少、各部の接触不良、バレル通液性不良、内部陰極不良、めっき液濃度低下など
- 注記:R1~R3はめっき装置や部品固有の数値で、日常管理のために定常値を把握しておくことをお勧めします。
バレルの優劣の指標「開孔率」
開孔率の制約
開孔率が大きいほど、液切れが良く電気抵抗が少ない理想的なバレルとなります。しかしながら、バレルの強度との関係を考える必要があります。通液孔の個数と密度が増加し開孔率が増大すると、バレルの壁面の機械的な強度が低下して、脆弱で実用に耐えないという相反する結果となります。
開孔率∝1/壁面強度
実用的な「開孔率」
開孔率は、孔形式(ドリル孔、スリット孔、メッシュ孔など)と、孔寸法により異なり、一般に孔直径が小さなドリル孔バレルは、加工の困難性から開孔率が低くなる傾向があります。
SKKの極小径ドリル孔バレルは、特許自動制御穿孔装置またはレーザー加工装置のため、高い開孔率を達成している。
SKKの標準バレルは全形式とも開孔率が約20%で、めっき効率と耐用強度のバランスに配慮している。
何気ないことですが.....
孔直径0.5mmφのドリル孔バレルで、開孔率20%を達成することは、実は想像以上に大変なことなのです。
0.5mmφのドリル孔を手作業で一生懸命に開けて、バレルを作ったとすると、どんなに手間ヒマかけても、その開孔率は多分3~7% 程度にしかならないでしょう。したがって、開孔率20%という値は、実はスゴい値なのです。
めっきバレルの話
バレルって何だ?
バレルとは barrel であり、樽(たる)を意味する言葉です。OXFORD辞典には次のように述べられています。
1a-中がふくらんだ形状で、一般には木製の容器。 1b-バレルに入る容量の単位。とくに石油の単位。 2-銃器など、金属製の長い円筒の部分
バレルめっきの始まり
1900年代の初め、米国でバレルめっき法が考案されました。ヨコ半分に切った木製バレルを45度傾け、内部にめっき液と部品を入れてめっきしました。バレルの底に鉄板をリベット止めして陰極として、外部には金属の摺動電極を設けています。当時、大陸横断鉄道建設のレール釘を入れた木製の空樽がゴロゴロと余っていたため思いついたと言われています。このめっき法は、バレルめっき(Barrel Plating)と呼ばれました。
水平バレルの登場
現在の一般的なめっきバレルの原型、水平バレルは1920年代に、やはり米国で考案されました。初期の傾斜型から水平型へ進化したものの、めっき効率は物凄く悪かったそうです。木製の側壁は厚く、通液孔がないので、液中に部分的に沈めて使用されました。
現代のバレル
1950年代以降にプラスチック材料が次々と登場して、めっきバレルは飛躍的に進化しました。プラスチック材料は化学薬品に対する耐食性が高くて軽く、さまざまな加工が容易にできます。現在のバレルは、NC制御工作機で加工され、孔開けには自動孔加工機やレーザまで駆使されて、これはもう精密機械であるといえます。